会長挨拶

小豆畑 茂 

旧年の6月に会長就任以降、第64回年次大会(9月)、事業企画委員会(10、11月)、The World Engineering Education Forum & The Global Engineering Deans Council (WEEF&GEDC) 2016 (11月)に参加し、本会の活動に触れることができました。また理事会ほかの会合における意見交換を通じて、本会の課題を再認識しました。これらの情報に基づき、本会を以下のように運営してまいります。

1.教育に有効で影響力のある情報の発信
 ICTの革新により「第4次産業革命」とも呼称される転換期を産業界は迎えています。また昨年9月には「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国連で採択され、17項目の開発目標(SDGs)が定められました1)。このような背景の中、内閣府はその構築を目指す超スマート社会をSociety5.0として示しました2)。これはICTを産業界での活用のみに止めず、SDGsとして示される社会の課題解決に駆使する社会です。このような転換期には、イノベーションを創出する人材の育成が教育界には求められます3)。本会は、社会的要請に応えられる人材の育成に適う教育手法を、適時に会員の皆様と共有できるようにして行きます。
(1)調査研究活動の更なる充実
 この目的に沿う活動のひとつは事業企画委員会の活動です。今年度は4テーマの調査研究が進められています。この活動を調査研究のレベルに止めず、その結果を会員の皆様と共有し、会員の皆様の教育活動に反映できるようにします。
(2)多様な情報交換の場の提供(コミュニティ形成)
 本会は、会員の皆様のニーズに沿う情報の提供と、これを促進する人的ネットワークの構築に努めます。会員に有益な情報としては、以下のように考えます。
 (a)若手教員には教育と研究の両面における相互研鑽のための情報
 (b)学長、研究科長・学部長等の経営層には、教育機関の運営に資する情報
 (c)シニア会員には、その経験と知識を次世代に伝承し、教育に貢献する機会に関する情報
 (d)賛助会員/企業会員には企業内技術教育についての課題解決法や新しい教育手法についての情報

2.日工教基盤事業の改善(活性化、質の向上)
 上記の情報発信には、そのための仕組み作りも必要ですが、「工学教育」誌と年次大会の充実が必須です。
(1)「工学教育」誌
 掲載論文は2000年の24編から2015年には84編と伸びています。論文は研究成果を会員の皆様と共有し、また後世に伝えるものであり、学会の貴重な知的資産です。年次大会での発表、事業企画委員活動の成果の多くが論文として投稿されること期待します。また会員の興味を惹く特集をこれからも継続して企画します。
(2)年次大会
 年次大会の参加者(有料)は2004年から2007年にかけては約600名でしたが、2008年以降は約500名です。これは個人会員の17%です。参加者4000人を超え、会員の30%以上が参加するASEE(American Society for Engineering Education)の年次大会4)5)とは対照的です。また2012年以降、講演発表数が減少しており、4年間で400件から300件に100件、25%減少しました。年次大会は人的ネットワーク構築に重要な機会であり、これを活性化する企画を考えます。特に、若い世代の参加者を増加できるセッションテーマの設定を企画します。先ずは、参加者600名を卑近の目標として、1000人を超える参加者の年次大会にするべく、その施策を検討します。
(3)資格制度(教育士)
 キャッチフレーズ「研究力は博士、技術力は技術士、教育力は教育士」のもとに、2005年から工学教育力を評価・認定する教育士(工学・技術)資格制度を推進し、延べ約1000人の教育士を認定してきました。本資格制度を定着させるため、このような資格があることをより社会に浸透させ、評価の透明性・客観性の向上を図り、さらに資格保有者が資格を継続して維持向上することを支援するツールの提供を検討します。

3.国際化
 技術者教育がグローバル化する。即ち、世界の教育市場がひとつになり、教育機関が国籍に拘わらず競合する時代になる。これは中長期にわたる展望ですが、しばらくは国際化、即ち各国の類似の機関との交流を通じて、教育手段のブラッシュアップを図る時代が続くと思われます。国際連携の強化策としては以下の2項目が挙げられます。
(1)海外からの情報入手
 年次大会にはInternational Sessionがあり、国際交流の場を設けていますが、2016年度の発表は16件でした。交流促進の観点から、これを全発表件数の10%になるようにしたい。また会誌の英文記事は過去5年平均で3編/年の掲載です。これも掲載記事の10%を当面の目標とします。
(2)海外への情報発信
 国際会議での本会々員の活躍を期待します。WEEF2015では会員による口頭発表が4件、WEEF&GEDC2016では口頭発表が5件と1件のポスター発表がありました。更に活性化して行きましょう。

4.ダイバーシティ
 多様性はイノベーション創出のひとつの源泉です。国籍、職業、性別、宗教等の異なる人材が適度な割合で本会の会員であることが望ましいのですが、残念ながら、その94%が日本人男性です。また約90%が教員です。本会は、定款に記載される通り、我が国の工学教育の振興と産業の発展に寄与することを目的とします。従って、現状の単一性は止むを得ませんが、女性会員の増加は、我々なりに努力できます。皆様のご尽力によりこの数年女性会員は増加しており、166名となりました。高等教育における理工系の女子学生の増加にも寄与する活動を通じ、更なる増強をはかりたいと思います。

5.地区工教との連携強化
 本会の公益社団法人化に伴い、地区工教とのコミュニケーションや連携活動が弱体化しています。これらを本来の状態に戻し、更に強化することを検討します。財政問題などに代表される共通の運営課題を共同で検討するため、具体的には以下の施策を地区工教と検討します。
(1)コミュニケーションの強化
 地区工教事務局連絡会議を開催します。
(2)共同事業の改善強化
 現行の地区工教との共同事業の内容改善を図り、共同ワークショップ、出張(講師派遣)講習会等を検討します。
(3)情報システムの連携
 情報システム連携により、会員管理業務を効率化します。

6.会員向け情報提供基盤の整備
 会員向けサービス向上を目指し、ホームページを常に更新するとともに、会員向けサービス提供基盤としての機能を整備します。

 本会の会員は毎年減少しています。ピークの2007年度の3528名から648名減少し、2015年度は2880名です。減少を止め、上昇に転ずるには魅力あるJSEEへの変容が必須です。これを念頭に理事の皆様のご意見をいただき、本会の課題を上記のようにまとめました。この課題解決に向けて、「日工教再生・強靭化プロジェクト(仮称)」を発足し、活動してまいりますが、いずれの課題解決も会員の皆様のご賛同と熱意あるご参加をもって達成できるものであり、ご協力を宜しくお願い申し上げます。

参考文献
1)http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_
 development/sustainable_development/2030agenda/
2)第5期科学技術基本計画(2016年1月22日)
3)文部科学省「理工学人材育成戦略」(2015年3月13日)
4)米田隆志:2015年度海外友好団体参加報告,工学教育,64-1,pp60-64,2016
5)2014 ASEE annual report


会長経歴
1973年 3月  東北大学工学部機械工学科卒業
1975年 3月  東北大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了
1975年 4月  株式会社日立製作所入社
2005年 4月  株式会社日立製作所 日立研究所長
2009年 4月  株式会社日立製作所 研究開発本部長
2014年 4月~ 株式会社日立製作所 フェロー
2016年 6月~ 日本工学教育協会 会長
 
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